「彼氏が既婚者だった。」
この事実を知った瞬間、多くの人は頭が真っ白になります。
失恋の悲しみだけではありません。
「信じていた人に騙されていた」という裏切り、「知らないうちに不倫相手になっていた」という罪悪感、そして「自分は見る目がなかったのでは」という自責の気持ちまで、一度に押し寄せてきます。
普通の失恋なら「相性が合わなかった」と整理できることもあります。しかし、既婚者に独身だと偽られていた場合は話が違います。
恋愛そのものが嘘の上に成り立っていたように感じてしまい、自分の記憶さえ信じられなくなることもあります。
今回は、実際に寄せられた相談をもとに、既婚者に騙されたショックから立ち直れない理由と、少しずつ心を回復させる方法について心理学の視点からお話しします。
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ご相談内容
彼氏が既婚者でした。
マッチングアプリで出会って交際した彼氏が既婚者でした。
交際期間は数ヶ月と短く、私が少し疑うような質問をするとあっさりと振られました。
その数日後に偽名だったことや職場も偽っていたこと、既婚者で子どもがいることも発覚しました。
勢いですぐに弁護士に依頼し、貞操権侵害で慰謝料をもらい示談となりました。
もう忘れたいと思っていますが、楽しかった思い出が浮かんだり、騙されていたことを思い出して悲しくなったりしてしまいます。
毎日考えてしまい、仕事でも結婚式に関わるため思い出してしまいます。
マッチングアプリで出会った相手を簡単に信用してしまったことは反省しています。
ですが、既婚者に騙されていたという失恋は初めてで、どう乗り越えればいいのか分かりません。
時間が解決してくれるのでしょうか。
回答|あなたが苦しいのは「失恋」だけが理由ではありません
まず最初にお伝えしたいことがあります。
あなたが今これほど苦しいのは、単なる失恋ではないからです。
普通の失恋なら、「好きだった人と別れた」という悲しみが中心になります。
しかし今回のようなケースでは、それに加えて次のような心の傷が同時に存在しています。
- 好きだった人に騙されていた裏切り
- 信じていた自分への失望
- 知らないうちに不倫相手になっていたショック
- 楽しかった思い出まで嘘だったように感じる苦しさ
- 「なぜ気付けなかったのだろう」という後悔
つまり、一つではなく何重もの傷を同時に抱えている状態なのです。
だから涙が止まらなかったり、何もやる気が起きなかったりするのは、ごく自然な反応です。
「もっと疑えばよかった」と自分を責めてしまう心理
相談者さんはこう書かれています。
「マッチングアプリで出会った相手をすぐ信用してしまったことは反省しています。」
とても真面目な人ほど、このように考えてしまいます。
でも、ここで忘れてはいけないことがあります。
恋愛は、お互いが誠実であることを前提に成り立つものです。
最初から偽名を使い、職業まで偽り、結婚している事実も隠し続ける。
ここまで計画的に嘘をつかれてしまえば、見抜くことは簡単ではありません。
人は恋愛をすると、「この人は自分を騙さない」という前提で相手を見るようになります。
これは心理学では正常な反応であり、「信用したあなたがおかしい」という話ではありません。
もちろん、この経験から慎重になることは大切です。
しかし、「信用した自分が悪かった」と結論づけてしまう必要はありません。
悪かったのは、信頼を利用して嘘をつき続けた相手です。
楽しかった思い出まで嘘だったのでしょうか
ここが一番つらいところかもしれません。
「あの笑顔も演技だったの?」
「一緒に笑った時間は全部嘘だったの?」
そう考え始めると、過去の記憶を何度も思い返してしまいます。
しかし、人の感情はそこまで単純ではありません。
相手は嘘をついていました。
それは紛れもない事実です。
一方で、一緒に過ごした時間に笑ったことや楽しい会話をしたことまで、すべてが演技だったとは言い切れません。
だからこそ心は混乱します。
「全部嘘だった」とも思えない。
「本当だった」とも思えない。
この矛盾した気持ちを抱えてしまう状態を、心理学では認知的不協和と呼びます。
頭では「最低な人」と理解していても、心の中には「でも好きだった」という感情が残っています。
この二つがぶつかるため、何度も思い出してしまうのです。
つまり、忘れられないのは未練があるからではありません。
脳がまだ出来事を整理しきれていないからです。
慰謝料をもらっても心が回復しない理由
「慰謝料をもらったのだから、もう前を向かなきゃ。」
そう思う人は少なくありません。
ですが、法律上の解決と心の回復はまったく別の問題です。
慰謝料は、相手の責任を法的に認めてもらうためのもの。
一方で心が求めているのは、「どうして私にこんなことをしたの?」という答えや、「信じた時間を返してほしい」という気持ちです。
そのため、示談が成立しても悲しみや怒りがすぐ消えるわけではありません。
「終わったはずなのに苦しい」というのは、ごく自然なことなのです。
SNSで相手の結婚式や家族写真を見てしまうのはなぜ?
相談者さんは、SNSで相手の結婚式の写真や子どもの写真を見てしまったと書かれています。
見た瞬間、とても苦しくなったのではないでしょうか。
「見なければよかった」と思っても、つい検索してしまう人は少なくありません。
実はこれも、心が傷ついたときによく見られる反応です。
心理学では、人は納得できない出来事が起きると、その出来事を理解しようとして何度も情報を集めようとする傾向があります。
「本当に既婚者だったんだ…」
「いつ結婚したんだろう。」
「奥さんはどんな人なんだろう。」
「子どもは何歳なんだろう。」
そんな疑問が次々と浮かび、答えを探そうとしてしまうのです。
しかし、その答えを知れば知るほど、心は何度も傷ついてしまいます。
結婚式の写真を見れば、「私はこの幸せな家庭の裏で騙されていたんだ」と感じてしまうでしょう。
子どもの写真を見れば、「私は知らないうちに家庭のある人と付き合っていたんだ」と現実を突きつけられます。
つまり、SNSを見ることは傷口が閉じかけるたびに、もう一度開いてしまう行動になりやすいのです。
もちろん、簡単に見ないようにできるものではありません。
ですが、「見たい」と思ったときは、それは未練ではなく心が答えを探している状態なのだと理解してあげてください。
ブライダルの仕事だから忘れられないのは当然です
相談者さんはブライダル関係のお仕事をされているとのこと。
これは想像以上につらい環境です。
毎日のように結婚式を目にする。
幸せそうな新郎新婦を見る。
そのたびに相手のことを思い出してしまう。
これは決して「立ち直れていないから」ではありません。
心理学では、出来事を思い出させる場所や音楽、匂いなどを「トリガー(引き金)」と呼びます。
相談者さんにとって、結婚式という空間そのものがトリガーになっているのでしょう。
そのため、「また思い出してしまった…」と落ち込む必要はありません。
それだけ強い出来事だったということです。
時間が経つにつれて、同じ景色を見ても心が大きく揺れなくなる日が少しずつ増えていきます。
「知らないうちに不倫相手だった」という罪悪感
この相談で特につらいのは、「自分が不倫相手だった」という感覚でしょう。
ですが、ここははっきり区別して考えてほしいと思います。
あなたは、不倫をしようと思って交際したわけではありません。
相手は独身だと名乗り、偽名まで使い、職場も偽っていました。
つまり、あなたは相手の嘘を信じるしかない状況だったのです。
もし結婚していることを知っていたら、交際しなかったはずです。
そうである以上、「私は不倫をした人間だ」と自分を責め続ける必要はありません。
責任を負うべきなのは、結婚している事実を隠し、あなたの人生や気持ちを利用した相手です。
どうか、その責任まで背負わないでください。
時間が解決してくれるのでしょうか
相談者さんは、「時間が解決してくれるのでしょうか」と問いかけています。
答えは、「時間だけではありません。でも、時間は確実に味方になります。」です。
心の傷は骨折と似ています。
無理に動かせば痛みは長引きます。
しかし、適切に休ませながら日々を過ごしていくことで、少しずつ回復していきます。
最初は毎日思い出していたことが、週に数回になり、やがて「そういえば最近思い出していなかった」と気づく日が訪れます。
回復とは、「完全に忘れること」ではありません。
思い出しても苦しくなくなることです。
その日までには個人差があります。
数か月の人もいれば、1年以上かかる人もいます。
どちらも異常ではありません。
この経験は、あなたの価値を下げるものではありません
既婚者に騙された経験をすると、「私は人を見る目がない」と思ってしまう人がいます。
ですが、本当にそうでしょうか。
誠実そうに振る舞い、身元まで偽り、恋人として接してくる人を、短期間で見抜くことは簡単ではありません。
今回の出来事は、あなたが愚かだった証拠ではなく、相手が悪質だったという事実です。
もちろん、この経験から学べることはあります。
- 交際を急ぎすぎないこと
- 生活の話を自然に聞いてみること
- 違和感を覚えたら見過ごさないこと
- 相手の言葉だけでなく行動も見ること
こうした経験は、次の恋愛であなたを守ってくれる力になります。
慎重になることは悪いことではありません。
ただ、「もう誰も信じられない」と心を閉ざしてしまう必要もありません。
世の中には誠実な人もたくさんいます。
今回出会った人が、その一人ではなかっただけなのです。
まとめ
既婚者に騙されるという経験は、普通の失恋とは違います。
恋人を失った悲しみだけではなく、信頼を裏切られた痛み、自分を責める苦しみ、そして「信じていた時間は何だったのだろう」という喪失感が重なります。
だからこそ、簡単に立ち直れないのは当然です。
それでも、ひとつだけ忘れないでほしいことがあります。
あなたが好きだった気持ちは、本物でした。
本物だったのは、あなたの優しさであり、相手を信じようとした気持ちです。
偽物だったのは、相手が見せていた「独身で誠実な男性」という姿でした。
あなたの愛情まで嘘だったわけではありません。
今はまだ思い出して涙が出る日があっても大丈夫です。
前を向けない日があっても大丈夫です。
傷ついた心は、「早く忘れよう」と急かすほど回復が遅くなることがあります。
だから今は、自分を責めるよりも、「あれだけ傷ついたのだから苦しくて当然だよね」と、自分の心に寄り添ってあげてください。
いつかこの経験は、「つらい思い出」から「人生の一つの経験」へと変わっていきます。
そしてその頃には、人を信じることと、自分を守ることの両方ができる、今より少し強くなったあなたがいるはずです。
焦らなくて大丈夫です。
あなたの心は、ちゃんと回復していきます。



